165年以上愛される和菓子の老舗・廣榮堂の挑戦と、若手販売員が目指す未来

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written by ダシマス編集部

165年以上の歴史を持つ和菓子企業・株式会社廣榮堂は、世界的な絵本作家・五味太郎さんがパッケージデザインを手がける主力商品『きびだんご』を筆頭に、バリエーション豊富な和菓子を製造・販売しています。「豊かな食シーンを、岡山から世界へ。」を合言葉に、伝統と発展を共存させながら日本の味を守り続けている老舗企業です。

今回お話を伺ったのは、廣榮堂のさんすて岡山店で店長を勤めている、入社5年目の松浦さん。地元岡山が大好きだという松浦さんは、販売員という仕事にくわえて、商品企画やイベント運営、国内出張などさまざまな経験を積み重ねてきました。「廣榮堂には、なんでも挑戦できる環境がある」そう語った松浦さんが見つめる、和菓子販売員の未来とは。

さんすて岡山店店長 松浦 愛美(まつうら めぐみ)さん

さんすて岡山店店長 松浦 愛美(まつうら めぐみ)さん

大学卒業後、地元岡山で地域に根ざした企業に勤めたいと考え、廣榮堂へ就職。販売員として、直営3店舗を経て現在は、さんすて岡山店の店長を務める。店長業務に加え、県外でのイベントや商品企画にも積極的に挑戦。好きな和菓子は水無月(悪魔払いと暑気を払う6月の和菓子の代表といわれている)。

風情や季節、食器や温度でも異なる味わいを楽しめる、和菓子に魅せられて

――まずは、松浦さんの自己紹介をお願いいたします。

今年で入社5年目になり、現在は岡山駅の新幹線改札口を出てすぐの場所にある、さんすて岡山店の店長として勤務しています。

生まれも育ちも岡山県だったのですが、高校卒業後は大阪教育大学の芸術学部に進学しました。4年間芸術について学んだり、個人で音楽活動をしたりして過ごすうち、岡山が恋しいと思うようになって。地元岡山で地域に根ざした企業に勤めたいと考え、廣榮堂への就職を決めました。

中納言本店、藤原店、岡山髙島屋店、そして現在のさんすて岡山店と店舗異動を重ね、時々イベント運営や出張業務もこなしつつ、販売部門で仕事をしています。

 

 

――地元企業の中でも、廣榮堂のどんな点に惹かれたのですか。

大学で芸術について学んだので、その知見を何かしら活かせる企業がいいなと考えていたんです。そんなとき、廣榮堂のパンフレットに『刻の美術館』のコンセプトでさまざまなアート作品を展示している倉敷雄鶏店が掲載されているのを見つけて。舞台芸術や空間芸術の観点で店舗運営の経験もできると紹介されていて、自分の知見が生かせるのではないかと思ったんです。

和菓子自体も、さまざまなデザインや色・形があって種類も豊富ですし、商品開発にも役立つのではないかと、ワクワクしたのを覚えています。

 

――毎日たくさんの和菓子に囲まれて仕事をしている松浦さんが考える、和菓子の魅力を教えてください!

たくさんあるのですが、日本の伝統や季節を感じられる面白さは和菓子の魅力の一つですね。四季に合わせた定番和菓子などを味わうと風情を感じますし、日本に生まれてよかったなぁとしみじみ実感します。

それに、和菓子には食べ方によっていろいろな楽しみ方があるんです。例えば岡山銘菓の調布は、温かさによって食感が異なるんですよ。焼いてしばらく経った調布はやわらかな食感を楽しめますが、トースターで少し温めるだけで生地がパリッとした食感に変わります。

盛り付けるお皿をこだわっても雰囲気が変わるし、抹茶やコーヒー、ジュースとも相性がいい。少し工夫するだけでさまざまな楽しみ方で味わえるんです。

 

――松浦さんの強い和菓子愛が伝わってきました……!仕事を始める前から、和菓子はお好きだったのでしょうか。

子どもの頃に茶道の習い事をしていたので、和菓子はずっと身近な存在だったんです。お茶を立てた後は先生が手作りの上生菓子を出してくださって、それがとっても美味しくて……!

食べて美味しいのはもちろん、和菓子は大切な場面でも活躍する存在だと思います。お祝い事から謝罪が必要な場面など、真心や誠意を示したいときにも和菓子の詰め合わせがあれば想いが伝わる。人の役に立つという面でも、和菓子はなくてはならない存在だと思っています。

 

販売員は、お客様と一番近い仕事。接客以外の幅広い業務経験も

――改めて、廣榮堂はどのような会社なのか、教えてください。

安政3年創業、岡山市内に5店舗と倉敷市内に2店舗を構える和菓子の製造・販売会社です。主力商品のきびだんごをはじめ、岡山銘菓の調布やむらすずめ、上生菓子など、幅広い和菓子を手がけています。

7店舗のうち4店舗は喫茶も併設しており、お飲み物と甘味もの、お食事を楽しんでいただけるお店もあります。

 

――この仕事のやりがいを教えてください。

販売員はお客様と一番近い場所で働く仕事なので、それぞれの和菓子に対するお客様の反応を直に感じられるのはやりがいにつながっています。特に喫茶併設店舗だと常連のお客様もいらっしゃるので、顔や名前を覚えて声をかけていただいたときは嬉しくなりますね。

お子様向けの和菓子作りイベントの運営を任せていただくこともあるのですが、イベントで出会ったご家族が後日お店に遊びに来てくださることもあります。和菓子が人とのつながりを運んでくれる気がして、とても楽しいです。

 

――人との出会いは、接客のお仕事だからこそ味わえる仕事の喜びですよね。イベント運営の仕事は、定期的に行っているのでしょうか。

お子様向けの和菓子教室については、岡山市内のショッピングモールや大学構内を借りて、上生菓子の職人さんと2名体制で随時開催しています。

他には、東京日本橋の三越本店で開催される全国銘菓展にも出展しています。全国銘産菓子工業協同組合に加盟している企業のみが参加でき、岡山県では廣榮堂だけが出店しているんです。全国の多種多様な和菓子が肩を並べ、各社その年のテーマに沿ってデザインした和菓子もご用意されるので、まるで和菓子の祭典のような盛り上がりです。

 

 

――和菓子の祭典……!それはぜひ行ってみたいですね!松浦さんも毎年参加されているのですか。

私は入社3年目で初めて上司に連れて行っていただき、以降は毎年参加しています。全国の和菓子職人さんにお会いできるし、あちこちで和菓子作りの実演もあって、開催中の一週間はお祭りに参加している気分そのもの。各県の技術や和菓子デザインを見て学んだり、実際に食べ比べてみたり、和菓子好きには幸せすぎる時間です。

春シーズンに開催されるイベントなので、桜餅を持ち寄る企業も多いのですが、自家製あんなどこだわりにもかなり違いがあって興味深いです。

 

販売員が商品企画の中心を担う!社内に浸透するヒット商品を生み出す仕組みとは

――入社前後で印象が変わったことや、ギャップを感じたことなどはありましたか。

年次関係なく、なんでも挑戦させてくれる環境が用意されていた点には嬉しい驚きがありました。入社説明会の際に、若手でも商品の企画提案ができるチャンスはたくさんあるし、実際に若手社員が発案したアイデアがヒット商品につながった例もあると説明を受けてはいたのですが、入社してみてなぜそれが実現できるのかわかったんです。

商品企画を行うプロセスとして、基本のPDCAサイクルの考え方が社員に浸透していて、先輩方が過去に提案した企画書もきちんと冊子やフォルダでまとめられている。若手社員でも、過去の資料を見ながら先輩に相談すれば十分に商品企画を行えるので、とても恵まれた環境だと感じています。

 

――商品企画のための専門部署があるわけではなく、若手含め社員全員が商品企画に携われるのですか。

廣榮堂の商品企画は、販売員がアイデアの発端となることが多いんです。

先ほどもお話しした通り、お客様の反応を直に見ているのは販売員。店頭に並ぶそれぞれの和菓子にお客様がどうリアクションしているか、その良し悪しは商品企画にも役立てられます。長年販売員として勤めている先輩方はお客様の反応を熟知されているので、その分商品企画につながる知見や視点を持っている方が多いんですよ。

よりお客様に気に入ってもらえそうな商品のアイデアを、販売員から本社・製造部門を交えた企画会議でお伝えします。企画が通った後は製造部門が試作をし、フィードバックを経て改良を重ねる……といった流れですね。

 

――販売員が商品企画に携われるのは、嬉しいポイントですね。松浦さんが仕事をするうえで大切にしていることを教えてください。

なんでも挑戦してみることと、一度始めたことはなるべく長く継続することです。

初めてのことに挑戦するのは、誰もが怖いと感じるものだと思います。でも少し勇気を出して踏み込めば、大きな自己成長や自信にもつながります。ありがたいことに、若手にも挑戦の機会を惜しみなく与えてくださる環境があるので、どんなことにも思い切って挑戦する気持ちは忘れずにいようと思っています。

私は器用なタイプではないですが、最初は上手にできなかったとしても、継続していると大抵のことはそこそこできるようになるんです。仕事においても、長く働いていればそれだけ多くのことを経験できるし、積み上がっていくものがきっとあるはず。なるべく長く続けて、できることをどんどん増やして成長を続けていきたいですね。

 

企業コラボ・地産地消で地元を応援。和菓子の魅力を岡山から世界へ伝えたい

――廣榮堂に勤めていてよかったなと感じることはありますか。

地元岡山を和菓子や食文化で盛り上げようというビジョンを持つ会社なので、地元が大好きな私にとっては、同じ志を持つ仲間と一体感を持って働いている感じがしてとても楽しいです。

販売員の皆さんは明るく気さくで、お客様ファーストの意識を持ち、丁寧な対応をされる方ばかり。繁忙期が明けると、他部署も含めてみんなでお疲れ様会を開くこともあるなど、社員同士の交流も盛んです。

また、2024年8月30日公開予定の映画『きみの色』とのタイアップや、各企業とのコラボレーションも盛んに行っています(取材:2024年7月)。原材料も岡山県産のものを使用し、社員研修の際には生産者の方のもとを訪れて交流をする機会もあり、岡山県が大好きな私にとってはまさに天職だと感じています。

 

――松浦さんの、会社への深い愛が伝わります。反対に、今後会社に期待することなどはありますか。

語学に堪能な販売員が比較的少ないので、社内で語学研修制度が充実したらさらにお客様への対応が充実するのではないかと思っています。近年はインバウンド需要も高まってきており、特に中国からのお客様が多いため、英語や中国語の教育機会があると、個人的には嬉しいです。

逆を言えば、語学が堪能な方が入社してくだされば活躍の機会がより広がるかと!

 

――松浦さんの今後の夢を教えてください!

まず直近の目標としては、和菓子やお店のこと以外にも、岡山のことはなんでもわかる販売員になりたいと思っています。

さんすて岡山店は新幹線の改札口から近いので、県外からお越しになるお客様がたくさんいらっしゃいます。中には岡山県の地理や観光スポット、交通移動情報まで、さまざまな質問をしてくださる方も。せっかく足を留めていただいたのだから、お客様の疑問にはなんでも答えられる販売員になれるよう、日々岡山についても勉強中です。

そしてゆくゆくは、和菓子の販売員として海外出張にも行ってみたいと思っています。

コロナ前には、海外で開催される和菓子イベントへの参加もありました。世界的に愛される和菓子の商品開発にも憧れます。

廣榮堂としても、創業175周年に向けて「豊かな食シーンを、岡山から世界へ。」というビジョンを掲げているので、いつか和菓子の魅力を世界に広められるような人材になれるように、これからも挑戦を重ねていこうと思います!

 

(取材:大久保 崇・執筆:神田 佳恵

 

株式会社廣榮堂の詳細・採用情報はこちらから

ホームページ:https://koeido.co.jp/

採用情報:http://recruit.koeido.co.jp/entry

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